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競馬への望郷 |寺山 修司

競馬への望郷
寺山 修司
角川書店 刊
発売日 1992-03




競馬ファンのバイブル!! 2005-10-20
競馬には、思わず自らの人生を投影させてしまうなんとも言えない魅力がある。例えば、私の友人は器用貧乏な自分を「二着止まり」の馬に重ねて、ステイゴールドやメイショウドトウを応援したものだった。
寺山修司における競馬もまた象徴となって描きだされている。
?競馬というのは長編小説だな?と言う寺山は、逃げ馬の哲学や勝てない競走馬の悲哀などを、それらの馬を応援する人々に重ね合わせて重厚なドラマへと昇華させている。
寺山の語りの中で、ただの1レース、ギャンブルの対象でしかなかったはずの競馬競争の一場面が、長編小説のピースのようにあらゆる物語とつながりをみせ、ある物事が違う物事の複線かのように活かされて、息づいてくるのである。
そして、後半の騎手伝記に至り、競馬という名のドラマが、観客、競走馬、騎手など実に多くの関わり合いの中で繰り広げられていることに気付かされる。
競馬はギャンブルである。しかし、それゆえに私たちの人生の映し鏡として表象されるのだ、と。
本書を読むと、本当にいてもたってもいられず競馬をしたくなってしまう。けれど、それはすでに「金儲け」のためのギャンブルではない。
寺山が言うように「馬券を買うことによって、私たちは自分自身を買う」のである。
競馬への意識そのものを変革してくれる競馬ファンのバイブルといえるだろう。


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